『原神』に外部ツールやフィルターを適用して「フォトリアル調」の表現を試みると、写実的になるどころか肌の黒ずみやノイズが生じ、不自然な見た目に崩れてしまいます。これは本作が高度に調整されたノンフォトリアリスティック(NPR:アニメ調表現)を前提に設計されており、現実世界の光の物理法則を再現する処理と根本的に衝突するためです。

本記事では、外部処理によるリアル化で画面が破綻する具体的な原因と、キャラクターの美しさを保つために組み込まれている独自シェーダーの仕組みを整理して解説します。

リアル調グラフィックの強制適用で生じる不具合の原因

『原神』のアセット(キャラクターモデルやテクスチャ)は、手描きのイラスト感を3D空間で成立させるために最適化されています。一般的な3Dゲームグラフィックは「テクスチャ」「ライティング」「シェーダー」の組み合わせで成立しますが、本作は陰影をあらかじめ計算・整理した状態で描画しています。

そのため、現実の物理法則に基づく光の挙動(PBRライティングなど)を外部から強制的に上乗せすると、以下の問題が同時に発生します。

  • 手描きの陰影と物理光源の干渉: テクスチャに最初から配置されているアニメ用の陰影に対し、ポストプロセスが追加の影を重ねるため、肌や衣服に油汚れのような黒ずみが浮き出ます。
  • 平坦な質感のノイズ化: なめらかに塗られているはずの均一な色面に微小な陰影計算が割り込み、不要なざらつきやムラが生じます。

アニメ調セルシェーダーとフォトリアルライティングの違い

本作のレンダリング方式と一般的なリアル志向のグラフィック方式では、光と影の扱い方が根本から異なります。

レンダリング方式光の計算方法『原神』のモデルに適用した場合の影響
アニメ調(セルシェーダー)陰影の境界線を意図的にステップ化(段階化)して制御する手描き風の均一な色面とメリハリのある輪郭が維持される
フォトリアル(物理ベース)光の減衰や拡散を連続的なグラデーションで計算する本来削ぎ落とされている不要な微小シャドウが汚れや皺として露出する

セルシェーダーは、アニメの作画と同じように「影の境界をくっきりと見せる」ことで成立しています。ここにリアル調の環境光や反射を差し込むと、境界のメリハリが失われて中途半端なグラデーションが走り、アニメ調モデル特有の清潔感が損なわれます。

顔の影と表情パーツが破綻する仕組み

キャラクターの顔がどの角度から光を受けても破綻しない理由は、顔専用の特殊なライトマップとシェーダーが常に制御されているためです。

通常の3Dモデルに現実的な光源処理を行うと、鼻の突起や眉骨の段差によって顔の中心に三角形の不快な影が落ちます。本作ではイラストとしての見栄えを保つため、視点や光源角度に応じて顔の影を自動的に消去・再構成する補正ロジックが働いています。

しかし、外部フィルターによってシャドウエフェクトやアンビエントオクルージョン(環境遮蔽)を強制的に割り込ませると、この補正処理が上書きされてしまいます。その結果、目のくぼみや頬の周りに本来想定されていない黒い影が固定され、表情が不気味に見える現象を引き起こします。

輪郭線とシャープネスによるディテールの破綻

  • アウトラインの二重化: 本作独自のアウトライン描画に対して外部のエッジ検出が重複してかかり、線の太さが不均一になってキャラクターが背景から浮いてしまいます。
  • テクスチャノイズの拡大: アニメ塗りに合わせて滑らかに作られたテクスチャへ過度なシャープネス処理をかけると、圧縮境界やドットの粗さが強調され、画面全体が粗悪に見えます。

超解像技術(アップスケーラー)の過剰適用による影響

リアル系タイトル向けに学習された超解像処理やアップスケーラーを適用した場合も、アニメ特有の空気感が崩れる要因となります。

写実的なゲーム向けのスケーラーは、現実世界の微細なディテールや繊維の質感を復元・強調するように調整されています。これを『原神』の滑らかな面に適用すると、本来存在しないはずの平坦なグラデーションを「ぼやけた質感」と誤認し、不要なテクスチャノイズを作り出してしまいます。これにより、柔らかな雲や遠景のフォグ、光の拡散(ブルーム)といったアニメ調の演出効果が過剰に引き締まり、世界全体の統一感が失われます。

綺麗なビジュアルを維持するための表示方針

『原神』の映像美は、フォトリアルの緻密さではなく、徹底して計算されたアニメ調アートスタイルの統一感によって成り立っています。見た目の質感を向上させたい場合は、外部フィルターで写実的な処理を無理に付与するのではなく、ゲーム内の基本設定を正しく合わせることが重要です。

  1. レンダリング解像度の設定: ディスプレイのネイティブ解像度に合わせて出力し、ぼやけやジャギーを抑えます。
  2. ゲーム内アンチエイリアスの適用: 開発側が用意したアンチエイリアスを使用し、セルシェーダーの輪郭線を破綻させずに滑らかに整えます。

不要な外部処理を重ねず、アニメ表現専用に設計されたセルシェーダー本来の描画をそのまま出力することが、テイワットの景観やキャラクターデザインを最も綺麗に楽しむための基本方針となります。

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鈴木 翔太

鈴木 翔太

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